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診断領域X線の線質表示法として用いられる ”実効エネルギー“ について

目 的

 原子力防災基礎用語集において ”実効エネルギー” は下記のように定義されている。

 実効エネルギーとは、広がったエネルギースペクトルをもつ放射線のビームを、それと同じ相互作用を

 する単一エネルギーのビームとして取り扱うことが可能なとき、そのエネルギーを ”実効エネルギー”という。

 診断領域X線の線質表現に用いられている ”実効エネルギー” が、上記の定義を満たしているかどうか、

​ 下記文献にも示しているが、文献内容に加えて下記の検証を行った。

方法 および 結果

光子と物質との相互作用,非干渉性散乱の散乱角度確率分布について

​照射線量 - 吸収線量変換係数について

被写体透過後のエネルギーフルエンス分布(被写体コントラスト)について

水ファントム内の吸収線量分布および深部量百分率について

考 察

光子と水との相互作用断面積データおよび質量減弱係数 µ/ρ・質量エネルギー吸収係数 µen/ρ データのグラフに

検証-3, 検証-4 で使用したスペクトル分布のエネルギー範囲、実効エネルギーを重ねてみると下図のようになる。

両スペクトルのエネルギー範囲は、相互作用断面積,µ/ρ ,µen/ρ が大きく変化するエネルギー領域にある。

これを単一エネルギー(実効エネルギー)に対する相互作用断面積µ/ρ ,µen/ρ で代用できないことは明白である。 

現在診断領域X線の線質表現に使用されている ”実効エネルギー” は、実測アルミニウム半価層から簡単に算出でき、

単一エネルギーであるためデータ量も少なく簡便に取り扱うことができる。そのため古くからX線質を表す ”実用量” として ”実効エネルギー” が用いられてきた。しかし安易に ”実効エネルギー” を用いて種々の物理量などを求めると、

上記検証に示したように、本来のスペクトル分布を持つX線に対する物理量などと乖離してしまう恐れがある。

 

​X線の線質を 一意的 に表現する唯一の方法は ”X 線スペクトル” を示すこと である。X 線スペクトルを表現することは

”実効エネルギー” に比べて複雑であり膨大な数値データが必要となる。しかし、現在ではX線スペクトロメータが無くても、高精度のX線スペクトル近似計算式を利用してX線スペクトルデータを取得でき、また膨大なデータもパーソナルコンピュータを利用すれば容易に処理することができる。

これからは、広がったエネルギースペクトルをもつX線束に関する物量量を求めるためには、理論的根拠が不明瞭な

”実効エネルギー” ではなく、X線スペクトルデータそのものを使用すべきである。

結 論

光子と物質との相互作用の観点、その他いくつかの検証からみて

半価層から算出される ”実効エネルギー” を、元のスペクトル分布を持つX線束と同等として扱うことはできない。

現在一般に使用されている ”実効エネルギー” は、本来の ”実効エネルギー” の定義を満たすものではない。

診断領域X線に関する物理量の算出のために ”実効エネルギー” は用いるべきではない。

 

 診断領域X線の線質表現法として用いられる実効エネルギーの問題点

    加藤秀起,林 直樹,鈴木昇一,安藤 翔,宮本まみ,若杉奈央,鈴木志津馬

    日本放射線技術学会雑誌,67(10),1320‐1326, (2011)

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